胃がんとピロリ菌の関係
ピロリ菌に感染すると多くのケースで胃粘膜が炎症を起こし、胃痛や不快感、吐き気を引き起こします。
ピロリ菌が原因となる萎縮性胃炎は「前がん状態」とも呼ばれ、胃がん発症リスクが非常に高い状態です。
そして日本人の胃がんの9割以上にピロリ菌が関与していることがわかってきました。
そこで胃がんの発症を防ぐ意味でも、ピロリ菌の除菌が推奨されます。
胃・十二指腸潰瘍とピロリ菌の関係
ピロリ菌が胃壁に取り付くと、細胞を弱らせてしまう毒素を出し始めます。
すると菌を排除しようとして血液中の白血球やリンパ球が付近に集まってきます。
両者の戦いが激しくなると、胃の粘膜が炎症を起こして胃炎になったり、胃や十二指腸の粘膜が深くえぐられて消化性潰瘍になったりすると考えられます。
ピロリ菌の検査
当院では、胃にピロリ菌がいるかどうかの検査を行っております。
ピロリ菌の検査には、胃内視鏡検査(胃カメラ)を伴う方法と、内視鏡検査を伴わない方法があり、それぞれ3つずつ、全部で6つの方法があります。
内視鏡検査を伴う方法
内視鏡で胃の粘膜を少し採取し、下記のいずれかの方法で検査します。
培養法
胃の粘膜を磨り潰し、ピロリ菌の発育環境下で5〜7日間培養して判定します。
迅速ウレアーゼ法
ピロリ菌がもつウレアーゼという酵素の働きによってつくられるアンモニアの有無を調べます。
組織鏡検法
胃粘膜の組織標本に特殊な染色をし、顕微鏡でピロリ菌がいるかどうかを調べます。
内視鏡検査を伴わない方法
内視鏡検査を行わずに、次のいずれかの方法で検査します。
尿素呼気試験
呼気を集めて診断する方法で、最も精度の高い方法です。ピロリ菌がもつウレアーゼという酵素の働きによってつくられる二酸化炭素の量を調べます。
抗体測定法
ピロリ菌に対する抗体が、血液や尿に存在するかどうかを調べる方法です。
糞便中抗原測定法
糞便中にピロリ菌の抗原(細菌毒素や菌体成分)があるかどうかを調べる方法です。
※保険適応でピロリ菌の検査が行えるのは、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、早期胃がんに対する内視鏡的治療後の患者様です。
ピロリ菌の除菌方法
ピロリ菌の除菌には、プロトンポンプ阻害薬(胃酸の分泌を抑える薬)と抗生物質を7日間服用します。
プロトンポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑えておいてから、抗生物質でピロリ菌を除菌するのです。
服用終了後から約1ヶ月後以降に、除菌療法の効果を判定します。
この方法による除菌率は、わが国では概ね8割前後と報告されています。
最初の除菌療法でうまくいかなかった場合は、違う薬を使って再度、除菌療法を行うことができます。
これにより、さらに9割以上の方で除菌が可能といわれています。
この除菌を行えば、感染期間が長きにわたっており、萎縮性胃炎の進んだ人も発がんリスクを3分の1以下に減らすことが可能です。